2025年04月15日

期待以上の短期間で内製AMRに遠隔操作機能追加を実現
-カワサキモータース株式会社-

リモートロボティクスが提供する、ロボットの遠隔操作を可能にする開発用ソフトウェア「Remolink Tools」を活用し、自社開発中のAMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行搬送ロボット)の遠隔モニタリング・遠隔操作を実現したカワサキモータース株式会社 生産本部 先行新技術開発課 鶴田さんにRemolink Tools採用の決め手や、遠隔機能実装のプロセスなどをお聞きしました。

鶴田 浩平 さん

カワサキモータース株式会社 生産本部 先行新技術開発課

生産に関わる様々な課題に対して、技術をもって解決していく役割を担う先行新技術開発課にて部品搬送の自動化・システム化の業務を担当。AMRの内製開発や群制御の実現などに日々取り組む。

Remolink Toolsで実現したAMRの遠隔操作機能追加

まずは実際に、開発中のAMRの動作をご覧ください。

導入企業プロフィール

カワサキモータース株式会社とは

カワサキモータース株式会社は「Let the Good Times Rollカワサキに関わる人すべての、よろこびと幸せのために)」をカンパニーミッションに掲げ、モーターサイクルをはじめ、オフロード四輪車、PWC(PERSONAL WATER CRAFT)、芝刈り機用向け汎用エンジンなどの製造を手掛けています。

Remolink Toolsを採用した生産本部 先行新技術開発課/鶴田さんの役割

先行新技術開発課では生産に関わる様々な課題に対して、技術をもって解決していく役割を担っており、弊社の製造現場に今までなかった新技術の開発や業務改革、将来の新製品に向けた長期的な試験研究などを行っています。
中でも、私は部品搬送の自動化・システム化業務に携わっており、AMRの内製開発や群制御の調整などを行っています。

なぜAMRに“遠隔操作”機能が必要なのか

そもそもAMRを自社で開発している理由

AMRの開発に至った経緯としては、生産における部品搬送工程の自動化・システム化のプロジェクトから始まりました。
当初は市販のAGVやAMRの採用を検討しましたが、展示会等で情報収集している中、LINX様からNavitec Systems社が販売している自律走行制御ソフト『Navitrol』を使うことでAMRを内製出来ると紹介していただきました。以前私が所属していた工機課では生産設備の内製設計・製作を行っていて過去にAGVを開発した経験もあり、そのノウハウを生かし、新しい技術に挑戦する形でAMRを内製開発することになりました。
またもう一つ大きな目的としてはAMRを内製することで、ブラックボックス化を回避することができます。市販品ではAMRのマッピングや調整、ルート・システムの変更、修理などメーカーに対応していただくことが一般的です。生産環境の変化に迅速に対応するにはそういった時間やコストが惜しいため、弊社内で柔軟にハンドリングできる内製AMRは弊社の方針にマッチしました。

省人化・完全自動化を目指すために導入するAMRになぜ“遠隔操作”機能が必要なのか

現在は開発機をテスト環境で試運用していますが、実際の生産工程に導入するとなるとテスト環境よりも多くの人やものが動く環境の中で運用する必要があります。本番環境への導入初期にはテスト環境では洗い出せなかったトラブルや予想外のことが発生すると予想されます。
また生産活動を支えるための部品搬送AMRであるため、AMR自体が止まってしまうことをできる限り避ける・止まってしまう時間を少なくする必要があります。実際の運用が始まると担当者である私は生産現場とは離れた場所にいることになるため、社内でもAMRの遠隔監視化の要望が出てきました。


 

遠隔モニタリングに留まらず遠隔操作までを簡単に実現

Remolink Toolsをトライするまでに至った理由

先述の通り、社内でAMRの遠隔監視化の要望があり、遠隔監視のシステムについて調査していた折、リモートロボティクスを知り、開発用ソフトウェアRemolink Toolsのフリートライアルに至りました。
一番の決め手はやはり導入ハードルが非常に低いことです。AMRや既存インフラの改造も小規模で実装可能というご提案を頂けたことに加え、当初想定していた遠隔監視だけでなく操作までが可能になることに魅力を感じました。

Remolink Toolsを活用した遠隔操作機能の開発をしてみて良かったこと

まずはリモートロボティクスのテクニカルサポートによる伴走支援です。最初の1か月で最低限実現したかった遠隔監視機能のベースを構築でき、次の1か月で機能拡充・通信安定性の向上、遠隔操作アプリUIの整理ができ運用可能なレベルにまで仕上げることができました。
またPythonプログラム次第でいくらでもやりたいことが実現できるカスタマイズ性の高さが非常に魅力的です。

逆に、Remolink Toolsを活用した遠隔操作機能の開発で困ったこと・要望

先述のカスタマイズ性に魅力は感じつつも、逆を言えば開発にはPythonプログラムを作成するスキルが必要になります。私はC言語の経験があったため、Pythonを初めて目の前にしてもある程度コードの読み書きができたのでスムーズな導入ができましたが、全く扱ったことがない方は苦戦するかもしれません。
また機能面ではRemolinkアプリの仕様上、「ボタンの長押し」ができないため、AMRへマニュアル操作での走行コントロールを行う際には、ボタンを押している間進み、離せば止まるという操作性を実現することはできませんでした。
ただ、その操作性も工夫次第でクリアできる課題であり、今回は例えば「左回転」ボタンを押すと次に別のボタンが押されるまで同じ動きを続けるという形で遠隔からマニュアル走行の指示ができる機能を実現しました。


 

AMRへの遠隔操作機能追加で見えてきた価値と今後の展望

AMRへの遠隔操作機能追加で生まれた価値

AMRは工場内に広く設定されたルートを走行します。何か異常が起きたときにAMRの異常内容を遠隔で把握し、遠隔から復旧走行再開が可能になるとAMRが停止している場所まで駆けつける必要が無くなります
また、遠隔化により一人で複数台のAMRを監視・操作が可能になるのでAMRに係るオペレーターの人員を最小限にすることができます。

取り組むべきチャレンジポイント

遠隔操作をするためには通信の安定性が必要不可欠です。遠隔操作中に通信が途絶えた場合にAMRが止まるといった安全側に働く制御をかける必要があり、現在改良を行っています。
また、AMRが自動走行しているときや実機で作業しているときと遠隔操作しているときで作業が被らないようにインターロック用意や遠隔作業中であることを周知させる仕組みが必要になります。

今後の展望

まずはAMRの遠隔監視・操作をよりよいものに作り込んでいきたいと思います。今回の紹介段階では実装されていない、AMRのステータス表示や異常内容別の復旧マニュアルの用意、UIの操作性改良など、今後も継続して改良していきます。
またAMRだけでなく、工場内の他の設備の遠隔監視・操作にも適用可能だと思っており、将来的には海外拠点にも展開していくことも検討しています。