“リモート”による人とロボットの役割分担が課題解決の突破口に!これまでにないアプローチで自動化を促進
リモートロボティクスのロボット技術パートナーである、ロボットシステムインテグレーター企業の豊電子工業から木倉氏を招いて2023年7月28日に開催したウェビナー内容を、当日ご参加頂けなかった方に向けてご紹介いたします。
2023年11月21日
豊電子工業は、ロボットの遠隔操作サービスを普及させるため、今年6月にリモートロボティクス(東京都港区、田中宏和社長)とのパートナー契約「Remolink Partners(リモリンクパートナーズ)」を結んだ。
常務執行役員の成瀬雅輝さんとSI事業部物流開発室の澤島徹さんにお話を伺いました。
「ロボットのリモート操作は人手不足に苦しむ製造現場の自動化を推進する有効な手段になり得る」――。成瀬常務はロボットのリモート操作について、期待感を口にする。
ロボットのリモート化を推進するためにSIerの豊電子工業が目を付けたのが、リモートロボティクスのクラウドサービスである「Remolink(リモリンク)」だ。
Remolinkを活用すればロボットに遠隔で指示を送るシステムを簡単に構築でき、作業者が現場にいなくてもロボットを動かせるようになる。地元に限らず全国どこからでも働けるため、人材の確保が容易になる。
「育児や介護などで現場に出るのは難しいが、在宅ワークで活躍できる人は世の中に大勢いる。その人たちが社会に参加できる機会を設けて、人手不足の解消に貢献できる点が魅力的」と成瀬常務。「新型コロナウイルス禍で、リモートワークという働き方があると世の中に広く浸透したため、機運がより高まったように感じる」と語る。
成瀬雅輝常務執行役員は「リモート化が進めば、育児や介護などで現場に出るのが難しい人でも在宅ワークで活躍できる」と語る
豊電子工業はこれまでにRemolinkを使ったデモシステムを2つ作成した。そのうちの1つがファナックの垂直多関節ロボット「CRX-10iA/L」を使った段ボール箱のデパレタイズシステムだ。
Remolinkを導入することで、パソコンやタブレット端末から現場の状況をモニタリングし、ロボットが箱をつかむ位置をワンタッチで指示できる。センサーでは正しく判別できなかった箇所も、人の目をセンサー代わりにすることで、的確な判断を下せるようになる。
デパレタイズ作業は、ロボットがビジョンセンサーなどのセンサーでデパレタイズする箱を認識し、つかんで降ろすのが一般的だ。
だが、センサーは必ずしも正しい位置を認識できるわけではない。
・箱のとじ目の隙間を、箱と箱の境界線と勘違いする
・ビニールテープなどで梱包され、光の反射で箱のサイズを正しく認識できない
・キャンペーンなど特別デザインの箱が混ざっていると、箱のサイズを見誤る
など、サイズや形の認識が難しくなってしまうケースがある。
箱の把持位置を誤認識してしまう例
正しい位置でつかめなかった場合、箱の落下などによるチョコ停(小さなトラブルによる短時間の稼働停止)が発生する。その度にシステムを復旧させないといけないため、作業効率が大きく落ちてしまう。
その問題を解消する一手として、デパレタイズシステムにRemolinkを組み込んだ。
自動化システムの設計、構築を担当するSI事業部物流開発室の澤島徹さんは、「光の反射は箱によりバラバラで、キャンペーン品は期間によって箱の柄が変わる。それら1つ1つをプログラミングするのは現実的ではない。ロボットと人工知能(AI)を組み合わせてこのような作業をさせるとなると、導入費用が高額になってしまう。また、導入後も新しい搬送対象物が出たらその都度AIに学習させる必要があり、ユーザーに対する負担が大きくかかってしまう」と指摘。「デパレタイズシステムに限った話ではないが、完全な自動化が難しい場合、障壁にあたる部分をリモートに託すことで費用や技術的な難易度を下げられる」と訴える。
センサーによる形状認識が難しい箱も、Remolinkで的確に把持位置を指示できる
豊電子工業はデパレタイズ作業の他に、ノロ掻き作業にRemolinkを導入したデモシステムを作成した。
ノロ掻きとは、鋳造に使う材料を溶かした溶湯(ようとう)の中に発生するノロと呼ばれる酸化物を、棒状の道具でからめ取る作業だ。ノロが多いと、製品の品質に悪影響を及ぼすため、ノロ掻きは鋳造ではとても重要な作業だ。
ノロは不定形で、発生する場所も定まらない。一般的にロボットによる自動化システムは、不定形物を認識するのが難しい。ノロ掻きはまさにその典型といえる自動化が難しい作業だ。
Remolinkを導入したデモシステムでは、画面に表示されているノロを選択するだけで、ロボットがノロをからめ取る。「ノロ掻きは高温な環境下での作業になるため危険で、自動化を求める声は少なくない。Remolinkを組み込んだリモート操作のロボットシステムなら、作業者の安全を確保できる」と澤島さんはRemolinkを導入することによるメリットを語る。
人がRemolink遠隔アプリの画面上で指定した位置にロボットがノロを取りに行く
豊電子工業は1981年にSIer事業に本格参入し、今日に至るまでに2万件以上の自動化システムを構築した実績がある。しかし、リモートでロボットを動かすのは未知の領域だった。リモートでロボットに動作を指示する自動化システムは、業界全体で見ても導入事例がまだ少なく、ノウハウが蓄積されているとは言い難い。
「現段階ではリモートといえば、現場以外の場所から稼働状況やトラブル発生の有無を確認する状態監視のイメージが強い。リモートでロボットを操作するという目線はまだ根付いておらず、まずは顧客に対して認知度を高めていく必要がある」と成瀬常務は話す。
SIerとして、顧客にリモートという選択肢を提案するため、豊電子工業はリモートロボティクスとパートナー契約「Remolink Partners」を今年6月に結んだ。10月現在、同社の他にロボットメーカーやSIer6社がパートナー契約を結んでいる。
リモートロボティクスのRemolink Partnersに参画することで、リモートロボティクスが案件の開拓に協力する他、SIerにとり多大な時間と労力がかかる要件定義をサポートするツールや、ロボットの遠隔操作システムを構築するのに必要なツール群「Remolink Tools(リモリンクツールズ)」の提供など、案件の進行段階ごとにさまざまなメリットを受けられる。
リモートロボティクスがサポートすることで、リモートでロボットを操作する自動化システムを構築したことがないSIerでも、案件の獲得やシステム構築ができるようになる。
Remolink Partnersになれば、案件の各段階に応じてリモートロボティクスのサポートを受けられる
リモートロボティクスは、Remolinkを組み込んだロボットシステムを構築するためのサービスとして、Remolink Builderを提供する。Remolink Builderは、Remolink Toolsと開発向けのサポートサービスで構成される。
「ツールの操作が簡単なことに加え、リモートロボティクスのサポート体制が充実している。これまでPython(パイソン)などのプログラミング言語を使ったことはなかったが、遠隔操作用のアプリを簡単に作成できた。デジタルネイティブの世代ならば、より簡単にアプリを作れると思う。Remolinkの導入に必要な作業をする心理的ハードルは低く、ロボットのリモート化は決して難しくない」と澤島さんは言う。
今後、リモート化を推進するための足掛かりとして、物流業界での導入を目指す。「物流業界は新しい技術を積極的に取り入れる土壌がある。そこで導入実績を増やし、ノウハウを蓄積できれば。その後、他の領域への展開を進めていきたい」と成瀬常務は今後を見据える。
「プログラミング言語に触れてこなかった私でも少し勉強しただけでRemolinkを組み込んだロボットシステムを構築できた」と澤島さん
リモートロボティクスは11月29日~12月2日に開催する2023国際ロボット展(iREX2023)に出展する。リモートを活用した自動化の提案を、会場で実際に見ることができる。出展ブースの位置は【E2-06】。
また会期3日目の12月1日10時30分から、リモートロボティクスの田中社長が「『リモート』がもたらす人とロボットの新しい働き方」をテーマに出展者セミナーを開催する。セミナーの聴講はウェブサイトから申し込み可能。
本記事はニュースダイジェスト社が運営するウェブマガジンRobot Digestからの転載です。