2023年02月16日

加速する中小企業の人手不足
リモートロボティクスが実現する 人とロボットの新たなワークスタイル

日本企業の2社に1社が人手不足と感じる現代。今後さらに深刻化が予測される“異次元の人手不足”に企業はどう向き合っていけばよいのでしょうか。本記事ではその実態をインフォグラフィックスで読み解きつつ、「人の判断」と「ロボットの自律動作」双方を生かすロボットの遠隔操作がもたらす新しいワークスタイルを提案します。

日本の企業を取り巻く人手不足の現状

帝国データバンクが2022年11月に発表した「人手不足に対する企業の動向調査」は、深刻な人手不足に陥っている2020年代の日本の現状を詳細に描き出し、波紋を呼びました。

同調査では、正社員/非正社員ともに人手不足だと回答した企業は、国内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が本格的に拡大した2020年4月以降でそれぞれ最も高くなり、過去最高だった2019年に迫る水準まで上昇。実に2社に1社が人手不足を感じる時代となっています。

国内企業の99%を占める中小企業ではこの傾向がさらに顕著で、その64.9%が「人手が不足している」と回答しています。これは、企業規模を問わず日本全体で人手不足を実感している企業の割合よりも高い数値となっています。

「『人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況に関する調査』調査結果」(日本・東京商工会議所)
(https://www.jcci.or.jp/i/v2_20220928_chosakekka.pdf)を加工して作成
※「人手不足に対する企業の動向調査(2022年8月)」((株)帝国データバンク)
(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220908.pdf)を加工して作成


こうした中、企業の対策は2つに大別できます。1つは、採用の強化や待遇の改善といった「人的資源(人材)」へのアプローチ。もう1つは、設備投資や業務プロセス改善を通じた「生産性向上/業務効率化」のアプローチです。テレワークなど多用で柔軟な働き方の推進は前者、DX(デジタルトランスフォーメーション)などは後者と言えるでしょう。

このうち、前者の“採用”については、厳しい局面が続いています。リクルートワークス研究所がまとめた「ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒)」では、従業員数300人未満の企業(中小企業)の有効求人倍率は大企業と比較して高い水準であるにも関わらず、人手が不足してしまっているのです。

「ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒)」(リクルートワークス研究所)
(https://www.works-i.com/research/works-report/item/220426_kyujin.pdf)を加工して作成

深刻な人手不足の原因

こうした人手不足を生む要因には、景気変動に加え、人口減少や少子高齢化といった人口動態も大きな要因として挙げられます。

岸田文雄首相が2023年年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と述べたのも、2022年の出生数が77万人台と推計され、政府の予想を11年も前倒す速度で少子化が進行していることを受けてのものでした。また、日本で第一次ベビーブームが起きた時期(1947~1949年)に生まれた世代、いわゆる団塊の世代が後期高齢者となり、3人に1人が65歳以上の高齢者となる「2025年問題」も目前に迫っています。

働く主軸の世代となる15歳以上64歳以下の人口を“生産年齢人口”と呼びますが、生産年齢人口は1995年の8726万人をピークに減少の一途をたどり、総務省の調査では2020年は7508万人。2030年には6875万人にまで減少すると推計されています。これはもはや“異次元の人手不足”と言えるでしょう。

「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)」(総務省)
(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/pdf/2021np.pdf)を加工して作成
「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)
(https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_ReportALL.pdf)を加工して作成

製造業における人手不足の現状

企業規模を問わず人手不足が進む中、長きに渡って日本の産業を牽引してきた製造業を見てみると、さまざまな課題に直面していることも見て取れます。
経済産業省がまとめた「製造基盤白書(ものづくり白書)」2022年版によると、国内の製造業就業者数は、ここ20年間で約13%ほど減少しており、2020年から2021年にかけてなど、近年はその傾向が特に顕著に表れています。

※2002年〜2021年
「2022年版ものづくり白書」(経済産業省)
(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/all.pdf)を加工して作成


前述した今後の人口予測と併せて考えると、減少のカーブは今後さらにきつくなるのは必至です。同白書では、製造業における若年就業者数はこの20年で減少した一方で、高齢就業者数は増加女性就業者数の割合も伸び悩むなど、人材確保が喫緊の課題となっています。

製造業就業者数が減少する一方、2021年の製造業全体の営業利益は18兆円で、過去10年で最も高かった2017年の17.3兆円を上回りました。営業利益を押し上げたのは主に販売数量の増加によるもので、就業者数が減少する中、現場の負担は増していると言えるでしょう。

生産年齢人口の減少が避けられない中、採用は相対的に難しくなり、採用にかかるコストも上がっていくことになります。一方で、就業者の視点で考えると、こうした人手不足によって「残業時間の増加」「休暇取得数の減少」など職場環境におよぼす影響がすぐ思い浮かびます。この状況が続くと従業員の働きがいや意欲の低下をもたらし、離職にもつながりかねません。人手不足は人材流出の悪循環を引き起こすリスクもあるのです。

また、柔軟な働き方の1つであるリモートワークは中小企業、製造業での実施率が低いとされています。帝国データバンクが2022年に発表した調査結果によると、大企業では半数近くがテレワークを実施していますが、中小企業では29.1%。企業規模が小さくなるほどテレワークの実施率が低くなっています。特に、業務上工場など現場での作業が多い「製造」でのテレワーク実施割合は「非製造」を7.5ポイント下回っており、現地に行かないと作業が成立しない職種では、リモートワークがほとんど普及していないことが分かります。

「企業がテレワークで感じたメリット・デメリットに関するアンケート」((株)帝国データバンク)
(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220204.pdf)を加工して作成

ロボット導入の現状

では、設備投資や業務プロセス改善を通じた生産性向上や業務効率化のアプローチの方はどうでしょう。産業用ロボットの導入はその1つで、製造業では、省力・省人化も視野に入れた機械設備導入によって人手不足対策を検討する企業も多いのが現状です。

日本のロボット市場はこれまで、自動車業界、電機電子産業、半導体などの製造現場における産業用ロボットを中心に導入が進み、ロボットが得意な作業分野が大企業を中心に一定程度確立されてきました。しかし、近畿経済産業局がまとめた『平成27年度産業用ロボットの新分野展開における導入阻害要因調査事業報告書』によると、回答した企業の半数でロボットの導入経験がないことが報告されています。

「平成27年度産業用ロボットの新分野展開における導入阻害要因調査事業」(近畿経済産業局)
(https://www.kansai.meti.go.jp/3jisedai/report/robot.pdf)を加工して作成


現状のロボットシステムは、作業のばらつきが少ない領域では力を発揮しますが、そうした領域は一部に過ぎず、多品種少量生産のように作業内容の変動が常にある領域では今なお人作業が中心です。対象の位置が少しズレたりするだけで判断に迷う繊細な機器をどう汎用的なものにしていくかが鍵ですが、情報や人材育成が不足しており、高額な設備投資に見合わない費用対効果が導入障壁となっていることがうかがえます。

「すべての人々が社会参加できるリモート社会の実現」—リモートロボティクスが提供する価値

リモートロボティクスはリモートロボットで事業者とワーカーをつなぐRemolinkプラットフォームを通じて、人手不足や現場の安全などに課題を抱える事業者の皆様に人とロボットがリモートでともに働く新しい選択肢を提案します。

作業のばらつきが大きく、完全自動化が特に難しいとされる中小製造業において、現場に導入したロボットシステムに対し、人がリモート環境から指示を出すことで「人の判断」と「ロボットの自律動作」双方を活かし、人手不足やワーカーの安全に寄与します。

ロボットシステムを制御するアプリケーションにリモートロボティクスが提供する開発ツールを組み込むことで、クラウドサービス「Remolink」経由でロボットの遠隔操作を可能にします。リモートロボット操作による作業実施だけでなく、業務量の設定やワーカーのアサインメント、進捗確認なども行えます。

人が少し判断力を提供することで、作業内容の変動が常にあるような領域でもロボットを活用できれば、ロボットの汎用性を高められます。AIを使った完全自動化や完全ロボット化は昨今のトレンドとして目を引きますが、AI技術やセンシング、画像処理などで高い技術を持つソニーグループと、ロボティクス技術やモビリティ技術を有する川崎重工がその経験からたどりついた見解は、完全自動化に適したところと、人とロボットのハイブリッドが必要なところがあるという“すみ分け”の重要性です。

リモートロボット操作はここまで挙げてきた企業の課題解決に寄与し、これまで働きたくてもさまざまな事情で働けなかった層、高い技術を有する希少人材の活用も推進しながら、人手不足の解消・人材の活用につながります。
リモートロボティクスはこれからも事業者/ワーカーが抱える課題の解決を目指し、新しいワークスタイルをそれを支えるサービスとともに提案し続けます。