2022年11月21日

名古屋ロボデックス特別講演ダイジェスト
「遠隔」「ロボット」「新しい働き方」の未来を語る

2022年10月26日にポートメッセなごやで開催された第5回名古屋ロボデックス特別講演にリモートロボティクス代表取締役社長の田中が登壇し「リモートロボティクスが考える人とロボットの新しい働き方」と題し、講演を行いました。今回、残念ながらご参加頂けなかった方に向け、講演内容をダイジェストにしてお伝えします。

「すべての人々が社会参加できるリモート社会を目指し、新しいワークスタイルを提案する」をPurposeに掲げるリモートロボティクスが向き合いたい3つの社会課題

1日1700人減少する生産年齢人口

日本の人口は減少の一途を辿っています。特に15歳から64歳までの、いわゆる生産年齢人口が顕著に減少しています。2020年から2030年の10年間で約630万人減少すると言われており、1日に換算すると約1700人です。
マクロ的に見ると、日本の社会が置かれている状況は非常にシビアです。働く主軸の世代が年々減少している現実、生産年齢人口の減少が喫緊の課題だと思います。

今ある働き方では働くことが難しい人たち

非労働力人口における就業希望者の数つまり、就業を希望しているのだけれど、何らかの理由で求職活動もできない、働くことが非常に難しいといった方々が約253万人います。そのうちの約7割が女性で、20代後半から50代前半の方が多く見受けられ、男性は定年後の方が多く、どちらも就業を希望しているのに仕事に就けない状況です。
なぜ、働きたいのに働けないかというと、近くに仕事がない、賃金・時間に見合う仕事がない、出産・育児・介護・看護で忙しい、健康上の理由で外出が難しいといった理由が約6割を占めています。地域的にも時間的にも制約のない、新しい働き方が必要になっているということだと思います。

リモートワークの普及は限定的

今ある働き方では働きづらい方が多くいる一方、コロナ禍で浸透したように感じる柔軟な働き方のひとつであるリモートワークの状況はというと、3割弱、27%の方しか実施できていません。7割強もの方々がテレワークできていないということです。テレワークが出来ない理由として、内容がテレワークになじまない、接客・製造・建設・運転など現地に行かないと作業が成立しない職種などです。柔軟な働き方の一つであるリモートワークの普及はまだまだ限定的であると言わざるを得ないと思います。


このようなマクロ的課題をしっかり捉えた上で、リモートロボティクスでは「すべての人々が社会参加できるリモート社会の実現を目指し、新しいワークスタイルを提案する」ことをパーパスに掲げて事業活動を行っています。

 

 

リモートロボットで事業者とワーカーをつなぐサービス「Remolink」で実現する人とロボットの新しい働き方

リモートロボティクスは、皆様からいただいた多くのお声を踏まえて、2022年9月29日、最初のサービスとなるリモートロボットで事業者様とワーカー様をつなぐサービス「Remolink」を発表し、合わせてリモートロボットの開発を支援するサービス「Remolink for Developers」のトライアル提供も開始しました。現在、2023年中の商用化に向けて事業検証を進めています。

柔軟なサービス提供の形

Remolinkは柔軟なサービス提供の形を予定しています。
例えば、社外のワーカーリソースを活用する場合は人材パートナー様と共に、社内においてロボット実装のご経験がない場合には、それに長けたシステムインテグレーター様と共にリモートロボットの導入を進めていきます。事業者様が対応できない部分は、我々がパートナー様と一緒に課題解決していくという取り組みを考えています。
一方で、社内に人材管理部門や生産技術などをお持ちの場合はこの限りではありませんし、それぞれの事業者様のニーズに対し、幅広くサービスを提供する予定です。

リモートロボットで事業者様とワーカーを繋ぐRemolinkをどのような場で活用いただけるか、事業者様の課題は何か、期待されている技術はどういうものか、それらを踏まえてサービスの内容に触れていきたいと思います。

完全自動化が難しい領域はまだまだ多い

一般的に、作業のばらつきが少ない領域において、ロボットや専用機・自動機が導入されているかと思います。
一方で、ワークや作業内容の変動が常にあるような、作業のばらつきが大きい領域では、今なお人作業だと思います。私たちはこの人作業の領域で、人とロボットのハイブリッドオペレーションが活用できるのではと考えています。
これは昨今のトレンドであるAIを使った完全自動化や完全ロボット化を否定するものではなく、完全自動化に適したところと、人とロボットのハイブリッドが必要なところがあるのでは、という棲み分けのお話です。

Remolinkが活用できるユースケース・事業者の声

Remolinkの想定ユースケースとして、完成品の外観検査、選別作業、溶接・研削などがあります。中食の盛り付け、農作物の収穫、検体の仕分けなどについてもニーズを伺っています。

具体的な事業者様のお声として某食品メーカー様では、「自動化には取り組んでいるが、技術的な課題で進んでいないのが現状。従業員の平均年齢は上がってきており、10年後には働いてくれる人がいないかもしれない。」や
某物流企業様は、「ワーカーの負担が大きい重労働のため、人材の獲得や維持が難しく、事故を防ぐための現場モニタリング業務の負担も大きい。業務量の変動が激しい上、ワーカーごとのキャパシティもばらばらでアサイン業務の負担がさらに増えてしまう。」と仰っています。
某大規模農園様からは「業務量が増加する際にはアウトソーシングも行うが、慣れていないワーカーがアサインされる場合もあり、業務依頼や管理の負荷が高い。」と伺っています。
事業者様の声から、技術的・費用的に完全自動化が難しい領域において大きく二つの課題と、課題に対するニーズが見えてきています。

リモートロボティクスはこれらの事業者様が抱える課題に対し、Remolinkを通じて解決に貢献します。

Remolink サービスイメージ

Remolinkは、作業現場へのリモートロボットの導入支援とクラウドサービスで構成されます。
クラウドサービス上では業務量の設定と、ワーカーの適切なアサインメント、リモートロボット操作による作業実施、進捗の確認、作業完了後の進捗ダッシュボードの振り返りまでを一気通貫の機能としてご提供できるよう進めています。

<ワーカーによるリモートロボット操作イメージ>

課題解決を実現する枠組み

リモートロボティクスは事業者の方から課題解決のご相談を受けましたら、必要に応じてリモートロボットシステムを構築するロボット技術パートナー、リモート業務を担う人材パートナーとのマッチングを行い、現場で作業を行うリモートロボットシステムと遠隔指示アプリの構築支援とリモート業務を行うにあたってのクラウドサービスの提供を行います。

Remolink 活用への期待の声

事業者様から頂いているRemolinkへの期待の声をご紹介します。

人材面の期待
某印刷業者様からは「現場の臭いや騒音、重労働という理由で人材確保が難しかったが、リモート作業化で新しい人材が採用しやすくなりそうだ」や
某物流企業様からは「本当は人を0にしたいが、0にはできない。1対Nの活用によって、一人の作業者が複数ライン持てると良い。」とのお声をいただきました。Remolinkは、一人の操作員が複数台ロボットを制御することもできますので、1対Nの作業を行えます。
某建材メーカー様からは「経験豊富な職人が複数場所において作業を実施できることは魅力的である」とのお声をいただいています。

管理面の期待
某化学メーカー様は「人が現場で作業しないことによってクリーン度が保たれる。ワークやワーカーへのコンタミリスクが低減され、逸失利益の低減につながる。」と仰っていました。
また某部品メーカー様は「経験豊富なワーカーと経験が浅いワーカーでは、外観検査の傷を検出するレベルに差がある。自動での傷検知に加え、判断補助を受けながらのリモートでの人の検査を組み合わせることによって、ワーカーのスキルによる品質のばらつき減少に期待ができる。」や「これまでデータを取得できていなかったが、自動でデータを蓄積し、工程傾向が把握できるとタイムリーな改善アクションが取れそうだ」という期待の声を頂いています。

具体的な効果

Remolink導入の具体的な効果として

●3Kや危険作業、重労働からの解放が安心・安全につながること。
●リモート化により人材確保が容易になり、また希少人材も活用できるという、人手不足の解消・人材の活用。
●人が移動することによる移動コスト、もしくは業務の管理コストを削減することでトータルのコスト削減、固定費の変動費化ができるということ。
●現場の人介在による品質低下の回避。品質の平準化・安定化だけでなく、突発的な事象が発生した際に、フレキシブルなリソースの確保や人員のアサインができることによる売上の増加。

「安心・安全」「人不足解消」「コスト削減」「売上増」の4つの観点が挙げられます。



より良い社会の実現に向けた共創

リモートロボットを活用したサービス、Remolinkはパートナー様と共創するもので、我々1社だけではRemolinkの世界観を実現できません。
共創する技術パートナー様の課題を直視し、解決のためにどのようなご支援ができるか、どのようなサポートプログラムがご用意できるかということも含めて、「Remolink for Developers」というプログラムをご説明します。

ロボット技術パートナーの声

あるロボットメーカー様は「既存の技術では完全自動化が難しい工程が多々ある。100%の自動化を目指そうとするとシステムは非常に高額になってしまうが、人がリモートで支援をしながらであれば半自動化が実現できる。人とロボットのハイブリッドが効果的ではないか。」と仰っていました。
またロボットシステムインテグレーター様からは「SIer業界全体が人手不足であり、特にソフトウェア人材の確保が難しい。新規のビジネスや顧客開拓に取り組むことが難しい」とお聞きしています。


ロボット技術パートナーの課題とRemolink for Developersの提供価値

ロボットSIer、ロボットメーカー様が抱える
●100%自動化の壁による失注
●システムインテグレーターの不足
●新規事業開拓における顧客開拓・マーケティングリソースの不足
これらの課題に対して、リモートロボティクスが提供するRemolink for Developersをご活用いただくことで、人による遠隔指示とロボットの自律動作を組み合わせた、ハイブリッドの新しいソリューションの提案が可能になります。

既存の人材で新しいソリューションの開発ができるよう、技術面でのサポートをすること。新規の事業開拓・顧客開拓のサポートをすること。この二つがRemolink for Developersの提供価値だと考えています。
具体的には、技術サポートとして、リモートロボットシステムを構築するための遠隔指示アプリケーションを簡単に作ることができるノーコードのツールを提供しています。その他、要件定義や運用サポートも進めています。また、マーケティング・セールスサポートとして、販促資料やマーケティングコンテンツのご提供、共同プレスイベントの開催、新規案件のご紹介などがあります。

「共創」より良い社会の実現に向けて

リモートロボットで事業者様とワーカーをつなぐ仕組みは、我々1社だけで実現できるものではありません。ご賛同いただけるビジネスパートナーの皆様と連携をして、変化の激しい世の中、共に課題解決に取り組み、より良い社会の実現を目指して共創していきたいと考えております。




本講演に対し、聴講者の皆様から
・製造業のリモートワーク化への希望が持てた
・完全自動化ではなくリモートによる半自動化は目から鱗の発想だった
・実例が出来れば知りたい
といった反応を頂いております。

今後も事業進捗情報、またセミナー情報なども弊社サイトにて発信していきます。